看護師が患者から出身学校を聞かれることは意外と多いそうだ。
この現象には、看護師の学歴と治療を行うために必要な臨床力は比例すると考えている患者が多いことが予測される。
しかし、実際には学校に入るために必要とされる能力と、看護師になってから必要とされる能力はかなり違うと言えるだろう。

たとえば、看護師に必須とされているのは、患者との信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルだ。また、チーム医療を成り立たせるために、他の看護師とうまく協力し合える協調性も必要となる。
受験勉強と違って看護師の仕事はほとんどが共同作業なのだ。そのため、自分が担う役割をきっちり把握でき、適切に助け合う姿勢が求められる。

さらに、大きな病院では毎日のように想定外の事態が発生する。
患者の病状が医師が予測していなかったスピードで変化したり、思いもよらないタイミングで異常をきたしたりすることがあるからだ。
急に生じた仕事と予定していた仕事に対し、どのような優先順位をつけ、どのような配分で時間を割き、誰の協力を得て対応すべきか。特に緊急を要する医療現場においては、判断力が求められる。
こうした場面で、臨機応変に動く能力を身につけた看護師が病院からの需要を満たした看護師だと言えるだろう。
たしかに、患者に適切な治療を提供するには、広い範囲にわたる看護の知識を暗記しておく力や、海外の論文を読む語学力など、受験勉強が活かされる場面も多々あるのは事実だ。しかし、看護師の仕事には、それ以外に求められる能力があまりにも多くあるのではないだろうか。